アブストラクト

多様体上の余次元1葉層構造に対しては,depthと呼ばれる不変量が知られている.D.Gabaiは1987年,三次元球面内の任意の結び目補空間に対してdepthが有限の性質のよいC^0葉層構造が存在することを示した.このGabaiの結果を受け,Cantwell-Conlonは結び目補空間に入るC^r葉層構造のdepthの最小値を結び目のC^r-depthと定義し,その性質について一連の研究を行った.ここで彼等の研究では葉層構造のコンパクト葉が一枚であるという仮定の下に議論が進められていることが多いことに注意する.
そこで,このような仮定は本質的であるか,すなわち,ある多様体に対してそこに入る葉層構造のdepthの最小値を考えるにあたり,考察する葉層構造のコンパクト葉は一枚だけであるという条件を付けた場合と付けない場合とでその値に差があるか,という問題が考えられる.
この講演ではまずnon-cable knotの0-twisted doubled knot Kに沿って三次元球面を0-surgeryして得られる多様体のn-fold cyclic covering spaceに対して上記の2つの値に差があること,またnを大きくすることにより,その差がいくらでも大きくできることを報告し,証明の概要を与える.またKがfigure-eight knotのとき,実際にコンパクト葉が1枚のtaut,transversely oriented,depthが有限のC^0葉層構造を構成できることを紹介する.更に時間があれば,葉のdepthのある種の振る舞いを記述する量(gap)に関して最近得られた結果も紹介する.